Fabミニ四駆カップ2014大会レポート
※本ブログはFabCafeサイトからの転載になります。
先週8/31にKOILで開催されたFabミニ四駆カップ2014。全く初の試みとして第1回目の大会でしたが、初回とは思えない大きな盛り上がりを見せました。ここでは、本イベントのきっかけや狙い、当日の様子、そして今後の取組みについてレポートしていきたいと思います。
FabCafeがミニ四駆大会を2ヶ月前に告知を開始した時は、なぜFabCafeがミニ四駆?とみなさんからちょっと疑問に思われたようです。そもそものきっかけは昨年にケイズデザインラボさんと根津さんと実施した「ジブンドロイドミニ四駆!ワークショップ」で知り合った根津孝太さん、そしてそのご紹介で知り合ったやまざきたかゆきさんとの出会いです。ジブンドロイドワークショップは、自分をスキャンして3Dプリントしたフィギュアをミニ四駆に乗せてレースするというイベントだったのですが、メインはあくまで3Dスキャンと3Dプリントでした。
FabCafeは様々な「もの」と「こと」を通じてものづくりの楽しさを提案していますが、より自分自身でものづくりと楽しんでいただけるものとFabを結び付けたいと考えていました。ものづくりは簡単なことではありませんし、時間も努力も必要です。それを厭わず取り組める魅力あるもので、且つFabの要素が盛り込めるもの、そしてFabらしい技術力が発揮できるもの、それがミニ四駆だったのです。
とはいえ、当初はボディーの3Dプリントやパーツのレーザーカッターでの切り出し程度を考えていたのですが、本番でこれほどバラエティー豊かなマシンが揃うことになるとは想像もしていませんでした。
さて、今回のイベントはFabCafeと新宿にあるゲームやミニ四駆が楽しめるカフェバーShuminovaを運営する山中さん、そして根津さんのznug designとやまざきさんのproduct_cの4者が共催にて実施いたしました。
当初Fab文脈の人とミニ四駆はマッチするのか?と思っていたのですが、実は声をかけてみるとみんなミニ四駆ブームを通ってきておりかなりなマニアぶり。FabCafeの岩岡も大会にまで出ていたそう。そこで、FabCafeのユーザーはこの大会を紹介するとすぐに作りたいものが頭に浮かんだようで、早速高度なものを作り始めました。
一方でまだFab経験が無い方や、今回の大会がFabを知るきっかけとなったShuminovaのユーザーであるミニ四駆の達人たちは、タミヤ製品をカスタマイズするということに関しては桁外れの想像力と造作力を発揮されるのですが、ゼロから作るということに対しては慣れていない状態。彼らにとっては既にあるもので十分なのでは?もしくは、カッコイイボディーが欲しいけど作るスキルが無いなどの課題がありました。
そこで、今回FabCafeの新たな試みとして、参加者にFabツールを無料開放し、デザインデータを作るスキルが無い方にはFabCafeのスタッフが意見やスケッチを参考にデザインを行ったり、より高度なスキルを提供出来るようスポンサー企業の技術者をパートナーとして組むマッチングの仕組みを取り入れたことです。 それを事前の走行会と共に行われるFabCafeでのOpen Fab Nightで少しずつ形にしていきました。
FabCafeのOpen Fab Nightの様子。思い思いのパーツをレーザーカッターで切り出したり、思いついたパーツを試しに作ってみたりしています。
走行会での優勝マシン。フル改造ミニ四駆ですが、ステーはアクリルで作ったオリジナルパーツにロゴがはいっています。
本番レースでは、自分好みの色で切り出したパーツを実装したものや、ワンオフのマスダンパーをつけたもの、ボディー背面にアクリル製のガードを付けたものなどが登場し、少しずつ作る楽しみがミニ四駆ユーザーにも広がったようです。
そんなOpen Fab Nightを走行会を2回経て、いよいよ8月31日の本番を迎えました。
今回の大会は柏の葉にある三井不動産とLoftworkが作ったKOILというオープンイノベーションスペースで実施されました。KOILは広大なシェアオフィススペースや、Studioと呼ばれるイベントスペース、Factoryと呼ばれるレーザーカッターや3Dプリンターを実装したプロトタイピングスペースなどがあり、研修やワークショップにも最適なスペースです。特に今回はレースの合間にレーザーカッターでパーツを作りながら走らせるなど、試合の合間でもプロトタイピングが行われており、まさにKOILならではのイベント風景だったのではないでしょうか。
当日は、まずビギナー向けのワークショップからスタート。Shuminovaの山中さんによる丁寧な組み立て方講座を行いました。ファミリーはもちろんですが、ミニ四駆が初めてという大人の方々にも参加いただき、基本的な組立とレーザーカッターで切り出したオリジナルパーツによる改造などを行い午後のレースに備えます。
会場では、ブースを設けてマシンを展示するチームも。こちらはNISSANチーム。展示台とパネルが本気を感じさせます。
午後はビギナークラス、カルFabクラス、マジFabクラスのレースが開催されました。
これがマジFab優勝者に送られるマテリアライズ社提供の3Dプリントトロフィー!!!豪華で美しい。
ビギナークラスでは、午前中にワークショップ作成したミニ四駆をカスタマイズしてレースに挑戦です。
ワークショップで作成したミニ四駆に少しだけFabオリジナルパーツでカスタマイズしたマシンでレースです。
熱くなる大人をかわし余裕の優勝です。上位3名にはマテリアライズ社より提供いただいた3Dプリントされたトロフィーが提供されました。
次に行われたカルFabクラスは実はスピードではマジFabを超えるクラスなのです。というのも、タミヤの公式レースに準じたルールにFabで作ったパーツを付ければOKというルールのため、大会でも上位入賞するようなカスタマイズミニ四駆が沢山登場しました。
車検を終えたマシン達。壮観ですね。ところどころに変なマシンがあるのもFabミニ四駆カップならでは。ちなみに中央付近に見える変なマシンはデイリーポータルZチームのマシン達。その活躍はこちらからのブログもご覧いただけます。
しかし、参加者の予定外だったのは3Dプリンタで作成されたバンプ。これをやまざきさんが意地悪な場所につけたためにレースは大波乱にw 総勢22台が参加したレースは、予想外のレースの展開と、広瀬さんの軽快な実況でマジFabクラスを前に会場は大盛り上がりとなりました。
カルFabクラスの表彰メンバーはこちら!今回は1位から3位に加え、デザイン賞、イノベーティブ賞も授与されました。
いよいよ本日のメインイベントであるマジFabクラスです。マジFabクラスはミニ四駆のキットに入っているパーツのみを利用し、改造パーツについてはFabマシンで自作しなくてはならないというハードなレギュレーションなのです。
揃いも揃ったユニークなマジFabクラスのマシン達。どれもかなりの手の込みよう。作り手の熱い思いが感じられます。
しかも今回は台湾から2チームが参加。FabCafe TaipeiのTimと、3DプリンターメインのメーカースペースMaker Barを運営するKammです。初回からグローバルな雰囲気でお届けしています。どちらも3Dスペシャリストで空冷を加味した構造などアイデアもユニークです。
さて、そんな中今回の大会で技術的に最も注目されたのがスポンサーであるStratasys社の最新3DプリンターConnex3で出力されたマシン達。マルチカラーのボディーやパーツはまるで市販品のようなカラフルな造形です。また、このプリンタの最大の特徴でもあるマルチマテリアルの機能を使った根津さんのマシンはまさにこのプリンタでのみ実現したミニ四駆なのです。
少し詳しくご紹介しましょう。上記の根津さんのマシンはタイヤが硬さや粘度が異なる複数の素材で出力されており、タイヤのグリップ、ダンパーの弾力、ホイールの硬度を一体に持つ構造になっています。金型ではこの構造は難しく、3Dプリンターでのみ実現出来る構造です。実際このタイヤを高いところから落としても中のダンパー部分がショックを吸収し、跳ねないように出来ています。
実際にレースでも3Dプリントされたバンプを乗り越え、予想以上のスピードで順調に走行する様子は、まさに根津さんの狙いどおり。これはかなり強いんじゃないのか!と、ゴールを目前にみんなの期待が高まったその時、事件が発生しました。タイヤがシャフトから抜けてしまったのです!残念。原因は3Dプリントしたホイールのシャフト受けの硬度が予定されていたものでなかったため、緊急対応でパテなどで固めたのですが結果的に十分な強度を得られなかったようです。ただ、実験はかなり成功に近かったように思えますので次回に期待です。
ちなみにレースではやまざきさんがリモコンでLEDを変色させる車を追走しつつ色を切り替えるアクロバティックな様子を披露したり、Autodesk vs Shadeや、HONDA vs NISSANの仕組まれたバトルが展開されるなど大いに盛り上がりました。
今回、デザイン性、技術力だけでなく、笑いで会場を一番盛り上げたのがAutodesk vs Shade対決。Autodesk藤村さんのマシンは、ボディーはもちろん、シャーシまで3Dプリンタで成形されており、美しさも素晴らしいものでしたが、どう見ても耐久性に疑問が・・。当初は走行をためらっていましたが大会の盛り上がりに走行させることを決心。しかし、実際にレディー・ゴー!の合図と共に1mmも進まず停止するというオチを2度も見せていただけました。
こちらはサメの形をした武井さんのミニ四駆。マジFabのイノベーション賞を獲得したのですが、Arduinoを実装し、距離とコースの傾斜を感知して速度をコントロールするというハイテクマシンでした。
そして優勝をさらったのはMDFの魔術師、澤井さん率いるHONDAチーム。今回、マジFab3台、カルFab1台の計4台体制で挑み、且つMDFでオムニホイールという高度な技術を実現するなど、その本気っぷりはまさにマジFabを制するに値するチームでした。
ホンダチームのマシン達。マシンを入れるケースやプレゼンボード、はたまたオリジナルキットまで用意いただきました。
マジFabクラスの受賞者達。初代栄冠はHONDAチームに!受賞者だけでなく、参加マシンどれもが本当にアイデア、技術が光るマシン達でした。
結果として、Fabユーザーもミニ四駆ユーザーも一体となって楽しめた、想像を大きく超える高い技術やユニークなアイデアを実現したマシン達が出揃ったことも大きな成果でしたが、Fabとミニ四駆を通じて多くの方にものづくりの魅力を感じていただくことが出来、さらに自分もあんなものが作りたい、こんなものが作りたいというアイデアがどんどん出てくる次に繋がるイベントになったことは嬉しい限りです。
また、今回はStratasys社、マテリアライズ社、Autodesk社などにスポンサードいただけたことで、高度なFabマシンを利用したマシン造形が出来たことも大会が盛り上がった大きな要因です。
やはりStratasys社のConnex3の実力はすごかった。まだまだこの3Dプリンターの特性を使った可能性を探る楽しみにあふれています。
マテリアライズ社のオンラインプリントサービス、i-materialiseでは、国内のプリントサービスでは実現出来ない多彩なマテリアルやサイズでの出力が可能です。
Autodeskは今回Fusion360という新しいモデリングソフトを使って造形されているのですが、非営利であれば無料で使えるとのこと。ぜひ使ってみてください。
また、今回メディア協賛いただいたデイリーポータルZ、イーフロンティア(Shade 3D)やマテリアライズ社からも既にブログ記事を公開頂いています。ぜひこちらもご覧ください。
- デイリーポータルZ 「ミニ四駆で凧をあげる」
- Shade 3D 「3Dでオリジナルミニ四駆づくりに挑戦! Fabミニ四駆カップ参戦レポート」
- i-materialise FabCafe主催ミニ四駆カップ、初代チャンピオンはホンダチームに!
今後の取組みとして、第2回目のFabミニ四駆カップの実施を6ヶ月後に予定しています。それまでの期間に毎月1回FabCafeではアイデアを形にするためのOpen Fab Nightを予定していますのでご期待ください。